モタードマシンの作り方(その1)
最近は雑誌とかで作り方や参考記事があるわけでもなく、解説もあまり見ないのでモタードマシンを作る際に気を付ける点などを書いていこうかと思います。
最初は「ホイール」編です(タイヤを含む)。
モトクロッサーを改修してモタードマシン(サーキット走行用)を作る場合と、市販車で一般道走行向けの場合とでは使うホイールサイズやタイヤが異なりますのでその辺は分けて解説します。
私が乗っていた2020 YZ250Fです。
レーシングマシン(450cc,250cc等モトクロッサーベース)
サーキットで走る場合、モタード用専用タイヤとしてスリックタイヤが発売されています。
これらを使用するのが一般的となります。
理由としては...
・専用タイヤなので剛性やグリップ等モタード用に作られており、セットアップしやすい(17インチスリックはST1000やJSB用が多く車重も重くスピードレンジも違うのでセットアップしにくい。
・高価ですが市販タイヤと違って溝が無いために(有るものもありますが)、減り方が綺麗で持ちも良い。
・レース等では周りも同じものを履いていれば、こちらも履かないと相手が有利になりますし、多くの人が使っていればセットアップに迷った際にも参考データが多い。
上記の理由でモタード用専用スリックを使えるホイールサイズを選定することになります。
フロントホイール
・3.50×16.5(BS、ミシュラン、メッツラー)
・3.50×16(ミシュランは2.75×16を推奨していますが、あまりそのサイズが無いので。タイヤ外径2.75×16よりは小さくなります)
・2.50×17(GP3用スリック)
・3.50×17(レインタイヤ用。BSは16.5インチのレインタイヤを市販しておりません。レインはBSという方は多いですね)
リアホイール
・5.00×17(一般的スリックですとこのサイズです。ミシュランは4.50幅を使うとBSやメッツラーに近い外径になります)
・5.50×17(ヨーロッパはこのサイズが多かった印象です。エッジグリップが良くなりますが、切り返しは重くなります)
・3.50×17(GP3スリック用サイズ)
さらにホイールは、スポークホイールとキャストホイールがありますし、スポークホイールでもノーマルハブを使う場合とハブも社外品で出来上がった物を買う場合とがあります。
最近はスポークホイールでハブごと全部組み上がった物で安いものもありますので、それらを選ばれることも多い印象ですね。
ですがボルトオンとうたわれながら、付けてみると不具合がある場合もあります。
ですので装着して確認することが大事です。
フロント
フォークガードを外した状態で一回ホイールを組んでみましょう。
そしてホイールがちゃんと左右インナーチューブのセンターにあるか確認します(リムの端からインナーチューブまでの隙間を左右測定します)。
左右で数値が同じであれば問題ありません。0.5mm以上ずれている場合(と言いつつまあ1mm)ずれていたらスポークのオフセットを変えましょう。
社外品のハブの場合、ブレーキ座面のオフセットが間違っていたりすることもありますので、その辺の確認もした方が良いですね。
これは年式違いの物を購入した場合など変わっていることもありますし、まずは測定して正しいか正しくないか確認することが大事です。
大幅にオフセットがずれている場合など、元々オフロード車のフォークスパンは狭いので、タイヤとアウターチューブが接触する場合も良く見られます。
コーナー中に荷重が掛かってフォークが沈んだ際にアウターチューブと接触、ブレーキング時も同様の事が起こります(大変危険です)。
社外品を付ける際は、まずは確認する癖をつけると後々問題が起こることが少なくなります。
キャストホイールの場合、現在手に入るのはマルケジーニくらいですが、これはちゃんとしてるのでステムのフォークスパンが広がってない限りは問題ありません。
あとキャストと言えばミシュランの16インチを履くためにCBR900RR(SC28、SC33)のホイールを使うのが多いですが、ちゃんと計測してデータを持っている所に頼みましょう。
モタードが始まった頃、マグホイールを付けている方がいましたが、ジャンプを飛んで着地した瞬間にホイールのリム部が裂けるのを見ました。
使わない方が安全です(ロードレースでもクラックチェックを欠かしませんから)。
確認が済んだらタイヤをはめますが、もう一つやることがあります。
フォークガードをカットしないとホイールやタイヤ、ブレーキを大径化している場合はそれらにも干渉します。
私はまっすぐ上から下までカットします。
理由は少しくらい残すよりもカットする際の手間が楽なのと、タイヤウォーマーを使用する際にタイヤにぶつからない程度ギリギリにカットしたものは、大抵タイヤウォーマーに引っかかって外すのに難儀するからです。
リア
リアホイールは車体の中央にホイールの中央が来ることはまずありません(GP3スリックを使う場合を除いて)。
MX用のタイヤよりも使うタイヤがかなり太くなりますし、チェーンラインも外にずらすことはあまりできません(後ろ側は多少外に振れますが、ドライブスプロケット側はたいていフレームと干渉しますので)。
ホイールはめる前に、取り外しし易くするための加工をします。
・チェーンガードの加工
チェーンガード取付ボルトのナットがスイングアーム内側についている場合が多いです。
これを皿ネジに変更して、ガードも皿揉みしてボルトの頭が出っ張らないようにします。
画像でチェーンガードの樹脂部分もカットされているのは、スプロケットを外側にさらに出してあるので、干渉するのでカットしてあります。
チェーン
今は軽量で幅がノンシールに近い寸法の520サイズのチェーンがありますので、これらに交換するタイヤとのクリアランスが取れます。
ファイナルが変わる場合も多いですので、この辺は一緒に換えてしまうのが良いでしょう。
おすすめはDIDの520ERVTです(個人的にカシメジョイントをお勧めします。クリップ飛ばして大変な目にあった人を見てるので)。
スプロケット
MX仕様よりはロングになる場合が多いと思います。
この時社外品のハブの中には、スプロケットボルトのナットが締めることができないような物も結構多いです(スポークが干渉する)。
ストレートタイプのメガネを薄く加工してやっと取り付けできる物や、本当に取り付けできなくてナットの径を変更せざるを得ない物もあります。
注意してください。
それと安いスプロケットでは、皿ネジの座面が悪い物(ボルトが緩みやすい)、真円度の悪い物なんかもありまして、この辺は信用のおけるメーカー品が良いですよ(isaとかSUNSTARなど)。
スプロケットが割れてチェーンがロックして大変な事になったり、スプロケットボルトが緩んでスイングアームに突き刺さってロックしてスイングアームもハブも全部だめにした物も見たことがあります。
スプロケットボルトも変な社外品は使わない方が良いです。
ここまで来たらまずは使うタイヤをはめて車体にセットしてみましょう。
そしてチェーンとタイヤとのクリアランス、右側のスイングアーム内側とタイヤとのクリアランスを確認します。
5.00×17で160サイズのスリックを使用する場合は、リアホイールのセンターは5mm以上右に寄っていて普通ですし、なんならチェーンラインも真っすぐではない場合も(スプロケ座面が外に出してある)よくあります。
そんなの許せないという方は、モタードできませんのでお帰りください。
なお使う車両が中古の場合、この時にチェーンスライダーとチェーンガードの樹脂部分は新品にしましょう。
ここが減っているとフリクションも多いですし、走っていてチェーンが横ブレすることが多くなります。
それはつまりチェーンがタイヤを叩くことが多くなり、無駄ですしチェーンの寿命を早めますし、なんならリムとチェーンが接触する事もあります。
なおホイールはチェーン引きを調整して、リアタイヤが一番前の状態でもスイングアームとかに干渉しないかチェックしましょう。
RMZやKXは干渉する場合が多く、スイングアームの加工尾が必要になる場合が多いです(使うタイヤにもよりますが)。
次はタイヤとサイレンサーが当たらないかのチェックです。
これはRMZ250にミシュランタイヤ、AKRAPOVICのサイレンサーを装着した場合です。
あてているバーの厚みは10mmですので、まあ30mmほどサイレンサーを外に出さないとタイヤとぶつかって折れてしまうので、この場合はエキパイをカットして外に出します。
これが移動量10mm以下ならカラーを入れてそのまま外に出すことにします。
AKRAPOVICはちゃんとしてるので、外に振れません(無理に外に出せますが、そうするといずれ割れますし、ジョイント部からエアを吸って音量が大きくなったり、エア吸ってセッティングがずれます。やめておいた方が良いでしょう)。
主要スリックのリアタイヤの寸法を記載しておきます。
リアタイヤで5.00幅のホイールに履かせた場合の実測寸法です。
・ミシュラン 幅162.5mm 外径620mm
・ブリジストン 幅159mm 外径628.5mm
・メッツラー 幅160mm 外径630mm
ミシュランは公式では4.50幅リムに組んだ場合 幅161mm 外径624mm
ホイールを組みましょうというだけで、そこそこ見なくてはいけないところ、加工が必要だと言う事がわかっていただけたでしょうか。
慣れている方は良いのですが、初めてやる方や他のカテゴリーから来た方は、わからないので結構面倒だと思います。
それとフロントホイールがMX仕様からかなり小さくなるので、私はフロントフェンダーは短くしたい派です。
長いままだと、速度域も高くなっているのでフェンダー先端が揺れるのが嫌ですし、チャタの増幅にも一役買っているようで嫌なんです。
これは珍しくフロントフェンダーをカットしなかった2023 YZ450Fです。
奥の2020 YZ250Fはフェンダーをカットしてあります。
次回は街乗りバイクのホイールとフロントブレーキの解説をしたいと思います。
なおフロントに16インチを履く場合の定番CBR900RRホイール、当店では2本在庫を持っております(SC33後期)。
各車種向け加工もできますので、作りたい方はどうぞお問い合わせください。
この記事へのコメントは終了しました。
コメント